敷地内に足を踏み入れると、趣の異なる三つの棟が織りなす空間美に圧倒される。本館、別館、茶室のそれぞれが異なる時代と目的を持って建てられ、そのすべてが国の近代和風建築の金字塔として評価されている。文化庁による厳密な調査を経て、平成30年にはこれら建造物群が国指定重要文化財に指定された。
本館は、木造2階建ての優美な数寄屋風建築。職人の卓越した手仕事が光る組子細工や、贅を尽くした床柱の木肌が見る者を飽きさせない。一方、明治43年の一府十四県連合共進会の開催に合わせて増築された別館は、木造2階建て・瓦葺きの豪壮なスケールを誇る。圧巻は2階に広がる180畳もの大広間だ。柱を最小限に抑えた広大な空間に立つと、当時の職人たちが挑んだ構造力学の限界と美学の融合を肌で感じ取ることができる。
離れに佇む茶室も見逃せない。京都の数寄屋大工が手がけたと伝わるこの小空間は、静謐そのもの。草庵風の侘びた風情と、計算し尽くされた窓の配置による光の陰影が、本館の華やかさとは対照的な精神世界へと誘う。