なぜ多くの大人が「真ん中の横棒」を先に書いてしまうのでしょうか。国語教育の専門家や文字認知の研究現場からは、人間の脳における「スキーマ(過去の知識構造)の無意識な適用」が指摘されています。
最大の原因は、小学校で初期に徹底して叩き込まれる「十(じゅう)」の書き順です。「十」は「横(1画目)→ 縦(2画目)」と書くのが絶対の基本ルールです。そのため、人間の脳は「田」の内部にある十字を見た瞬間、無意識に単体の「十」の筆順パターンを呼び出してしまい、横棒から手を動かしてしまうのです。
さらに、「日」「目」「月」といった日常頻出の枠組み漢字が「横棒を順番に並べて閉じる」構造であることも誤認に拍車をかけています。漢字検定の筆順問題でも、「田」やその部首を含む漢字は成人の正答率が予想以上に下がる定番のトラップとして知られており、大人だからこそ陥る認知的錯覚といえます。