本作が日本国内でこれほどまでに熱烈な支持を獲得した背景には、極めて上質な日本語吹き替え版の存在がある。特にジェームズ・スペイダー演じるレッドの声を担当した大塚芳忠の名演は、まさに伝説と呼ぶにふさわしい。大塚の艶のある低音、独特のタメ、皮肉と愛情が入り混じった語り口は、レッドの多面的な人間性を完璧なまでに日本語へと昇華させた。
エリザベス役の甲斐田裕子による芯の通った感情表現、レスラー役の宮内敦士が醸し出す実直な響きなど、脇を固める声優陣の布陣も豪華を極めた。字幕ではどうしても拾いきれない情報密度の高いセリフの応酬を、声優陣の卓越した技量が見事なエンターテインメントへと仕立て上げている。吹き替え版を観るためだけに周回視聴を重ねるファンが後を絶たないのも頷ける完成度だ。