海田町は西側と北側を広島市安芸区や南区に囲まれており、地理的にも生活圏としても広島市と完全に一体化しています。実際、平成の大合併の時期を含め、過去には広島市との合併を巡る議論が幾度となく持ち上がりました。それでもなお、海田町が安芸郡に留まり単独町制を貫いているのには、明確な経済的・行政的理由が存在します。
最大の理由は、全国の町村の中でもトップクラスを誇る財政の健全さです。海田町は面積が約13.79平方キロメートルとコンパクトながら、マツダ関連の自動車部品工場や大手企業の製造拠点、陸上自衛隊第13旅団司令部が置かれる海田市駐屯地などが立地しており、手堅い法人住民税や固定資産税の収入を確保しています。
広島市に編入合併された場合、税収が広域行政全体に分散され、これまで行き届いていた手厚い子育て支援や高齢者福祉、小中学校の施設整備といった町独自のきめ細かなサービス水準が低下するのではないかという住民の懸念がありました。住民投票や意向調査でも自主独立を選択する声が多数を占め、「あえて合併せず、小回りの利く強い町を維持する」という選択が定着しています。