鬼界カルデラが過去に何をもたらしたのかを知るには、約7300年前(縄文時代早期末)に発生した「アカホヤ噴火」を振り返る必要がある。この噴火は、人類史が経験した中でも屈指の規模を誇る超巨大噴火だった。
噴出したマグマの総量は500立方キロメートルを超え、発生した巨大火砕流は海上を約100キロメートルも滑走して南九州一帯を焼き尽くした。当時、南九州で独自の発展を遂げていた縄文文化(貝文文化)は、一瞬にして壊滅。その後、数百年間にわたってこの地域が無人の荒野と化したことが考古学的発掘からも証明されている。
さらに、大気中に巻き上げられた火山灰は偏西風に乗って日本列島全体を覆い尽くした。これが地質学上で「アカホヤ火山灰」と呼ばれる鮮やかなオレンジ色の火山灰層である。遠く東北地方や朝鮮半島にまで降り積もり、数年間にわたる寒冷化を引き起こした。現在、海上に顔を出している薩摩硫黄島や竹島は、この時に吹き飛んだカルデラ縁のほんの一部に過ぎない。薩摩硫黄島の硫黄岳から立ち上る白い噴煙は、巨大なマグマシステムの息吹そのものなのだ。