インバウンド(訪日外国人)の急増に伴い、国土地理院は2016年に「外国人向け地図記号(15種類)」を策定しました。日本人向けの伝統的な地形図記号と外国人向けピクトグラムとの間には、直感的な理解度を巡る大きなギャップが存在していたためです。
最も大きな議論を呼んだのが、寺院を表す「卍(まんじ)」の扱いでした。仏教寺院の伝統的な記号として日本人には馴染み深いものの、欧米圏の旅行者からはナチス・ドイツのハーケンクロイツを想起させ、誤解や不安を招くとの指摘が相次ぎました。この結果、外国人向け観光マップ用としては「三重塔」のシルエットをモチーフにしたピクトグラムが新たに設計されました。
このほかにも、日本人向けの記号と外国人向けのデザインには以下のような明確な違いが設けられています。
- 交番:伝統的な「警棒の交差(×)」から、警察官が敬礼するピクトグラムへ変更
- 郵便局:「〒(逓信省のテ)」から、直感的な「手紙(封筒)」のデザインへ変更
- 病院:「五角形に十字」から、建物の中に十字が描かれたグローバルデザインへ変更
- ホテル・宿泊施設:人がベッドに横たわるピクトグラムを採用
従来の伝統的な2万5千分1地形図では「卍」や「〒」が引き続き使用されているものの、多言語観光ガイドやデジタルマップ上では外国人向けピクトグラムが広く普及し、共存体制が敷かれています。