世界の原子力安全史を語る上で欠かせないのが、スリーマイル島、チェルノブイリ、そして福島第一原発の3つの重大事態です。それぞれ原因や炉の構造、被害の広がり方に明確な違いがあります。
1. スリーマイル島原発事故(1979年・アメリカ)
アメリカ・ペンシルベニア州のスリーマイル島原発2号機(加圧水型軽水炉:PWR)で発生した事故は、給水ポンプの停止を契機に、逃がし弁の作動不良と運転員の誤認が重なったことで冷却水が喪失。燃料棒が過熱し、商業用原発として世界初の炉心溶融(メルトダウン)に至りました。周辺住民への放射線影響は極めて微量に抑えられたものの、計器への過信やヒューマンエラー対策の脆弱性が浮き彫りとなり、以後の運転訓練や安全工学を大きく変退させました。
2. チェルノブイリ原発事故(1986年・旧ソビエト連邦)
ウクライナのチェルノブイリ原発4号機(黒鉛減速沸騰軽水圧力管型原子炉:RBMK-1000)で起きた爆発事故は、安全試験のために安全装置を意図的に解除した状態で無理な低出力運転を行ったことが原因でした。黒鉛炉特有の構造的欠陥が重なり出力が暴走、水蒸気爆発と水素爆発により原子炉建屋が全壊しました。放射性物質がヨーロッパ全土に拡散し、消火・収束作業にあたった作業員や消防士ら多数が急性放射線障害で死亡。現在も石棺や巨大シェルターによる管理が継続しています。
3. 福島第一原子力発電所事故(2011年・日本)
2011年3月11日、マグニチュード9.0の東日本大震災に伴い発生した巨大津波が福島第一原発(沸騰水型軽水炉:BWR)を襲いました。地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機や配電盤が水没し、全交流電源喪失(SBO)が発生。原子炉の冷却機能を完全に失った1〜3号機で燃料が溶け落ちる炉心溶融が起き、発生した水素ガスによる建屋爆発によって大量の放射性物質が大気や海洋に放出されました。