感情的な議論が先行しがちなテーマだからこそ、冷静に整理すべき「構造上の誤解」が存在します。ネット上で頻繁に見られる「国民負担率47%なのだから、給料の半分が国に奪われている」という主張は、厳密な経済指標の定義から見ると一部の誤解を含んでいます。
最大の盲点は、国民負担率を算出する際の「分母」の定義です。多くの生活者は「自分の年収(額面給与)」の47%が取られていると考えがちですが、財務省が用いる国民負担率の計算式は以下の通りです。
国民負担率 =(租税負担額 + 社会保障負担額)÷ 国民所得(NI)
ここで分母として使われている「国民所得(National Income)」は、国内総生産(GDP)から固定資本減耗(設備の減価償却費)や純間接税などを差し引いたものであり、一般的な給与所得者がイメージする総収入よりも約2割ほど小さい数値になります。分母が小さく算出されるため、計算結果としての負担率パーセンテージは高めに出るという統計上の特徴があります。
また、分子に含まれる租税や社会保険料には、法人税や企業が負担する社会保険料の「労使折半の会社負担分」も計上されています。そのため、個人の手取り率が直ちに「100% − 47% = 53%」になるわけではありません。年収400万〜600万円前後の一般的な単身給与所得者の場合、額面に対する直接的な税・社保負担(所得税・住民税・社会保険料)の実効負担率は約20%から25%程度(手取り率は約75〜80%)にとどまります。
しかし、ここで油断してはなりません。「会社負担分の社会保険料」は、企業視点で見れば本来は従業員へ還元できたはずの人件費原資です。企業が支払う社会保険料が増加すれば、その分だけ基本給のベースアップは抑制されます。さらに、私たちが手取り給与から日々の買い物をする際には10%の消費税が課され、ガソリン税、酒税、たばこ税などの個別間接税も徴収されます。これらを総合的に勘案すれば、額面通りの「五公五民」ではないにせよ、稼いだ富の4割近くが実質的に公的部門へ吸い上げられているという実感は、決して大げさな誇張とは言えません。