仏像と晴明伝説に目を奪われがちだが、境内に佇む「西古墳(文殊院西古墳)」の存在を忘れてはならない。国の特別史跡に指定されているこの古墳は、飛鳥時代に築造された終末期古墳の最高峰とされる。
切石の精緻な加工技術は驚嘆に値する。巨大な花崗岩が狂いなく積み上げられた石室内部は、内部に入って見学することが可能だ。ひんやりとした切石の玄室に立つと、当時の土木技術の高さと、大化改新の立役者となった安倍氏の権勢の凄まじさが肌身に迫る。
知恵の信仰、陰陽道の神秘、そして古代国家形成期の政治史。境内を歩き進めるごとに次々と現れる異なる時代のモニュメントが、知的探訪の楽しさを何倍にも膨らませてくれる。