股周辺に現れる病変は、大きく「強い炎症を伴う痛いおでき」と「自覚症状に乏しいしこり」の2パターンに分かれます。
まず、強い痛みを伴う代表例が毛嚢炎(もうのうえん)です。ムダ毛の自己処理や下着の摩擦で毛穴に微小な傷がつき、そこから黄色ブドウ球菌などが侵入して赤く腫れ上がります。炎症が悪化して膿(うみ)が溜まると「せつ(おでき)」や「よう」と呼ばれる状態に進行し、座るだけでも激痛が走るようになります。
一方、皮膚の下にドーム状の半球が触れ、中央に小さな黒点(開口部)が見える場合は粉瘤(アテローム)が疑われます。皮膚の内側にできた袋状の組織に老廃物や皮脂が溜まる良性腫瘍です。通常は痛みがありませんが、細菌感染を起こして「炎症性粉瘤」になると急速に赤く腫れ上がり、激しい痛みを引き起こします。粉瘤は根本的な袋を取り除かない限り再発を繰り返すため、自然治癒することはありません。
さらに警戒すべきは、太ももの付け根のしこりとリンパの関係です。そけい部(足の付け根)には主要なリンパ節が集まっており、下半身の炎症やウイルス感染に反応して腫れることがあります。多くの場合は感染症が治まれば縮小しますが、「痛みが全くなく石のように硬い」「数週間かけて徐々に大きくなっている」「表面がゴツゴツして動かない」といった特徴がある場合、悪性リンパ腫や他臓器からの転移性腫瘍といった悪性疾患との違いを鑑別するため、速やかな精密検査が欠かせません。