作者である吾峠呼世晴氏は、登場人物のビジュアルに重厚な物語性を込める天才だ。『鬼滅の刃』が従来の少年漫画と一線を画すのは、記号的なキャラクター造形に人間味溢れる動機付けを忍ばせる点にある。
天狗の面という和風の怪異モチーフをあえて「顔の優しさを隠すため」に使うギャップの妙。仮面劇としての構造が、物語にミステリアスな奥行きを与え、読者の想像力を刺激し続ける。一見すると厳格な頑固親父に見える鱗滝が、炭治郎や禰豆子を抱きしめて涙を流すシーン。面の奥にある目に見えない「素顔の表情」が、読者の脳裏に浮かび上がる瞬間だ。