作品を浅く追っている層からは、「累は家族をいたぶって楽しむサイコパスな鬼だったのではないか」という皮肉混じりの誤解を受けることがある。しかし、原作第5巻の幕間や公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』に記された裏設定を丹念に検証すると、その見方は完全に覆される。
鬼舞辻無惨によって鬼化された者は、人間時代の記憶が激しく混濁し、自我が歪められる性質を持つ。累の場合、両親を自らの手で殺めたという耐え難い自己否定から逃れるため、無惨によって「お前が悪いのではない、お前の強さを理解しなかった親が悪い」と認知を歪められ、記憶に強いプロテクトがかけられていた。つまり、「自分が親を殺した理由」を忘却しながらも、「家族の絆を取り戻さなければならない」という強迫観念だけが暴走していた状態だったのである。
また、無惨が下弦の鬼たちを「弱すぎる」として後に解体(パワハラ会議での粛清)した際、累の死をきっかけに激昂した事実も見逃せない。無惨にとって累は、自らと同じく「病弱な肉体から鬼となった」同胞であり、下弦の中で唯一、群れることを許可し、自身の血を他人に分け与える特権まで与えていた特別なお気に入りだった。絶対的捕食者である無惨の歪んだ寵愛と、失われた実の家族の絆の狭間で引き裂かれていた点こそが、累という存在の最大の悲劇なのである。