1980年代後半から1990年代にかけて、大島渚はお茶の間のテレビ画面でも強烈な存在感を放ちました。とりわけ深夜の激論生番組『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)におけるパネリストとしての姿は、多くの視聴者の記憶に焼き付いています。
論理のすり替えや官僚的なごまかし、形式的な建前論を口にする政治家や知識人に対し、顔を真っ赤にして「バカヤロー!」「何を言ってるんだ!」と怒声を浴びせる姿は番組の名物となりました。しかし、この激怒は単なる感情の爆発ではありません。大島が激しく怒りを向けたのは、常に「弱者の痛みに鈍感な権力構造」や「責任を取らない既得権益層」でした。
番組プロデューサーや共演者たちの証言によれば、生放送が終わった瞬間の大島は非常に紳士的で、議論を交わした相手にも分け隔てなく温かい笑顔で挨拶を交わす気配りの人であったといいます。怒ることで議論の空洞化を防ぎ、視聴者に「自分の頭で考えること」を突きつける——それもまた、大島渚という表現者が選んだメディア実践の一環でした。