強烈な個性を放つ彼の表現力は、小劇場シーンが熱気を帯びていた1980年代後半から90年代の演劇界で鍛え上げられた。かつて盟友である温水洋一とともに結成した演劇ユニットなどで見せた実験的かつシュールなコントや舞台は、今も語り草となっている。
計算し尽くされた不条理劇から、一瞬で場の空気を凍りつかせるシリアスな演技まで、舞台の上で培った身体感覚は現在の映像表現の強固な土台だ。個性派俳優が多数所属する名門「フロム・ファーストプロダクション」に籍を置き、独自のポジションを確立した背景には、アンダーグラウンドな演劇空間で培った人間観察の深さがある。ただ台詞を喋るのではなく、佇まいそのもので人物の背景を語る技術は、こうした叩き上げのキャリアによって磨き抜かれた。