早期回復を目指す上で、体に良いものを食べる以上に重要なのが「骨の癒合を物理的・化学的に邪魔する要因を遮断すること」です。知らず知らずのうちに摂取している嗜好品や加工食品が、治療期間を数週間単位で引き延ばしてしまうリスクがあります。
筆頭に挙げられるのがアルコールとカフェインの影響です。飲酒は中枢神経を麻痺させて再転倒・再骨折のリスクを高めるだけでなく、アルコール代謝の過程で生じるアセトアルデヒドが骨芽細胞の働きを直接抑制します。さらに強い利尿作用によって、血液中のカルシウムやマグネシウムが尿中に排泄されてしまいます。コーヒーやエナジードリンクに多量に含まれるカフェインも同様に、利尿作用とともにカルシウムの腸管吸収を妨げるため、骨折治療中は1日1杯程度にとどめるか、デカフェへの切り替えが賢明です。
もう一つの見落としがちな盲点が、スナック菓子やインスタント麺、加工肉(ソーセージ・ハム)に多用されている「無機リン(リン酸塩)」の過剰摂取です。リン自体は骨の構成要素ですが、食品添加物由来の無機リンは体内への吸収率が90%以上と極めて高く、血中濃度が急上昇します。血液中のリン濃度が高くなりすぎると、カルシウムと結合して不溶性の化合物を形成し、体外へ排出されてしまいます。結果として血液中のカルシウム濃度を維持するために、せっかく治りかけている骨からカルシウムが溶け出す「骨塩溶出」という本末転倒の事態を招きます。