古谷一行の代表作を語る上で絶対に外せないのが、横溝正史シリーズにおける探偵・金田一耕助役だ。ボサボサ頭に袴姿、フケを飛ばしながら頭を掻き、事件の真相へと迫るあの泥臭くも愛らしい姿は、お茶の間に強烈なインパクトを与えた。映画版の石坂浩二と並び、テレビドラマ版の金田一耕助といえば古谷一行というイメージを不動のものとしたのである。
彼が主演を務めた一連のサスペンスドラマは、日本のテレビ史における金字塔となった。おどろおどろしい愛憎劇や複雑に入り組んだトリックの中でも、古谷の演じる金田一が放つ人間味溢れる優しさが、作品に温かな救いを与えていた。彼が築き上げたサスペンスドラマの表現様式は、後の事件ドラマやミステリー作品の制作にも多大な影響を与え続けている。