下処理を終えた後に待ち受ける最大の関門が加熱工程です。ネット上では「サッと10秒くぐらせるだけ」という極端なレア推奨から「しっかり5分茹でる」という過剰加熱まで情報が錯綜していますが、食品衛生と食感の双方を高い次元で満たす正解値は明確に存在します。
厚生労働省の食中毒防止指針によると、海の幸に潜む寄生虫への対策として白子の加熱によるアニサキス予防は極めて重要視されています。アニサキス幼虫は60℃で1分間以上の加熱(または70℃以上での瞬時加熱)によって死滅します。一方、白子の主成分であるタンパク質は、75℃を超えると凝固が急速に進み、85℃を超えてグラグラと沸騰させ続けると水分が絞り出されてゴムのような硬い食感に変質してしまいます。
導き出される理想の加熱法は、真鱈白子の湯通しにおける「微沸騰(80〜85℃)」キープです。鍋にたっぷりの湯を沸かしたら、差し水を大さじ2〜3加えるか火力を極弱火に落とし、沸騰の泡が静かに底から立ち上る程度の状態を作ります。そこに一口大の白子を静かに投入します。検証データに基づくタラ白子の茹で時間の目安は、標準的なサイズで60〜90秒、大ぶりの房でも最長120秒です。
茹で上がった白子は、網杓子で手早くすくい上げ、あらかじめ用意しておいた氷水へ直行させます。この白子の氷水での締め方が、余熱によるパサつきを防ぎ、外側の薄皮をキュッと引き締めて内部にとろりとしたクリーム感を閉じ込める決定的な役割を果たします。ただし、氷水に長く浸しすぎると再び水っぽくなるため、完全に粗熱が取れる約30〜45秒で素早く引き上げることが肝要です。