本作における柴咲コウのビジュアル面でのアプローチは、当時のファッショントレンドにも多大な影響を与えました。
最も象徴的だったのが、現場で着用していたANAの実用的なつなぎ(作業着)です。油汚れを恐れず、工具を手にして巨大な航空エンジンの内部へと潜り込んでいく姿は、泥臭くも凛とした美しさを放っていました。ドラマのために過度に飾り立てるのではなく、実際の整備士の作業動作や安全確認の手順を徹底的に叩き込んだ上で演じられたその所作は、現役の航空関係者からも「整備士のリアリティを損なっていない」と極めて高い評判を獲得しました。
また、当時の柴咲コウのヘアスタイルであるウルフベースのレイヤーショートボブは、若者を中心に爆発的な人気を博しました。ヘルメットを脱いだ際に無造作に揺れる髪先や、飾り気のないシンプルなTシャツ姿は、歩実の媚びない内面性をそのまま体現。当時流行していた過度な巻き髪やフェミニンスタイルとは対極の、機能美を追求したナチュラルなスタイルとして支持されました。
柴咲コウの演技力に対する評価も本作で決定的なものとなりました。怒りや悲しみを大声で叫ぶのではなく、沈黙や目線のわずかな揺らぎ、整備工具を握りしめる手の力加減で感情の機微を表現する「引き算の演技」は、木村拓哉の動的な芝居と見事なコントラストを形成。単なるヒロイン役にとどまらず、作品のシリアスなリアリズムを牽引する中核としての役割を完璧に果たしました。