宮沢りえという表現者の凄みは、ビジュアルの変化がそのまま演技の引き出しの多さへと直結している点にある。平凡な主婦が欲望の渦へと落ちていく様を描いた『紙の月』や、余命宣告を受けながらも家族へ無償の愛を注ぎ続ける母親を演じた『湯を沸かすほどの熱い愛』といった一連のヒューマンドラマ作品では、彼女にしか出せない凄絶なリアリティが観客の心を揺さぶった。
これらの作品で見せた圧巻の演技は高い評価を受け、日本アカデミー賞協会をはじめとする数々の映画賞で最優秀主演女優賞を獲得。目元のシワやかすかな表情の陰影すらも役に息吹を吹き込む道具として使いこなす深みは、若い頃の美しさだけでは到達できなかった領域だ。噂されるビジュアルの変化は、スクリーン上で感情を爆発させるための「豊かな表現力」へと見事に昇華されている。