『Santa Fe』に先駆ける同年の1991年、もう一つの金字塔が打ち立てられていた。女優・樋口可南子を撮影した『ウォーターフルーツ』だ。本作は日本のメディア表現におけるタブーを打ち破り、空前の議論を巻き起こすこととなった。
従来、隠すべきものとされていた美を、圧倒的な光と水の陰影によってひとつの崇高なアートへと昇華させたこの作品。篠山が提示した鮮烈なカット群は、単なる刺激的なヌード写真集の枠組みを完全に解体してみせた。水滴の輝きと肉体美が織りなす繊細な世界観は、法律や社会的通念の議論すら巻き込みながら、日本人の美意識そのものを不可逆的にアップデートしたのである。