痒みに耐えかねて、菜箸、編み棒、定規、針金などをギプスの隙間にねじ込んで患部を擦ろうとする人が後を絶ちません。しかし、整形外科医が口を揃えて「絶対にやってはいけない」と警告するのには明確な理由があります。
ギプス内部の皮膚は、汗や体温でふやけて非常にデリケートな状態にあります。先端が丸く見える棒であっても、見えない内部で表皮を容易に傷つけ、皮膚トラブルや湿疹、さらには皮膚潰瘍(かいよう)を引き起こします。傷口から黄色ブドウ球菌などの細菌が侵入すると、化膿性皮膚炎や蜂窩織炎(ほうかしきえん)へと悪化し、最悪の場合は骨折治療そのものを中断して皮膚切開や抗生剤点滴治療が必要になるケースさえあります。
さらに恐ろしいのが、差し込んだ異物の先端が折れてギプス内部に残ってしまう事故です。異物が圧迫創傷を作り、深部組織に壊死を起こす引き金にもなるため、ギプス棒で掻く危険性を侮ってはいけません。