クリームオブターター(Cream of Tartar)の正式な化学名は酒石酸水素カリウムです。ワインを樽で熟成させる過程で沈殿する結晶(酒石)を精製して作られる天然由来の酸性塩で、見た目はきめ細かい無臭の白色粉末をしています。
お菓子作りにおける最大の役割は「メレンゲの起泡性と安定性の向上」です。卵白は本来pHが8〜9程度の弱アルカリ性ですが、クリームオブターターのような酸性の物質を加えると、卵白のpHが弱酸性側へと傾きます。これにより、卵白に含まれるオボトランスフェリンやオボアルブミンといったタンパク質が適度に変性し、気泡の膜を強固に支えるネットワークを形成します。
結果として、泡立てたメレンゲから水分が分離する「離水」を強力に防止し、時間が経ってもヘタらない、きめ細かくシルクのような光沢を持ったメレンゲに仕上がります。さらに、砂糖を煮詰める際にショ糖が再結晶化して固まるのを防ぎ、滑らかなシロップやフォンダンを作る働きも担っています。