去り行った名名優たちが残したものは、古典の守護だけではない。革新へのたゆまぬ挑戦もまた、彼らが遺した大きな功績である。女方の大御所である坂東玉三郎をはじめ、美意識と技を極めた名手たちは、常に時代の一歩先を見据えながら後進の指導と新しい表現の開拓に力を注いできた。
その象徴的な結実とも言えるのが、大きな話題を呼んだ『新作歌舞伎 風の谷のナウシカ』に代表される挑戦的な試みである。アニメーションの名作を歌舞伎の様式美へと昇華させた挑戦は、従来の歌舞伎ファンのみならず新たな層を劇場へと呼び込んだ。偉大な先人が去っても、そのフロンティアスピリットは若い世代へと確実に受け継がれている。