伝統を守るということは、過去の遺産をそのまま大切に保管することと同義ではない。時代ごとの空気感を吸い込み、新しい観客の感性に訴えかけるアプローチを試み続けてこそ、伝統は生き物として存続する。シェイクスピア作品の歌舞伎化をはじめとする新作への挑戦や、思い切った演出の導入など、常に攻めの姿勢を崩さないアプローチは後進の役者たちにも多大な影響を与えてきた。
「型があるからこそ型破りができる」という言葉を地で行くように、古典の土台が盤石であるからこそ、どのような冒険を試みても歌舞伎としての軸がぶれることはない。2026年現在の舞台でも、古典演目の中にふと見せる現代的な解釈やユーモアのセンスは際立っており、若い世代の歌舞伎ファンを増やし続ける原動力となっている。