山田裕貴のキャリアにおいて、野球をテーマにした作品や、始球式でのマウンド登板は特別な意味を持ってきた。かつて諦めたマウンドに、俳優として立つ。甲子園の始球式で見せた彼の涙は、多くのファンの心を打った。それは単なる緊張の涙ではなく、かつて夢を諦めた自分自身と、その夢の象徴であった父親への、彼なりのケジメだったのだろう。
「やっと親父と同じグラウンドに立てたような気がする」。そんな想いが、あの涙には込められていたに違いない。二世というレッテルを嫌い、自らの実力だけで這い上がってきた彼だからこそ、その瞬間は父親という高い壁を乗り越え、一人の男として並び立った瞬間でもあった。