「そら豆は水から茹でるのが正しいのか」という疑問に対し、調理科学の観点から検証すると、熱の伝わり方と葉緑素(クロロフィル)の熱変性に決定的な違いが存在します。
野菜全般の加熱セオリーとして「土の上にできるものは熱湯から、土の中にできる根菜類は水から」という原則が知られています。生のそら豆を水から茹でる理由として挙げられるのは、急激な温度変化による薄皮の破裂を防ぎ、中心部まで均一に熱を通してトロリとした柔らかさを引き出す点にあります。しかし、水から徐々に加熱すると、鮮やかな緑色を司るクロロフィルが熱と酸の影響を長時間受けて褐色化(フェオフィチン化)しやすく、さらに余分な水分を吸ってホクホク感が損なわれやすいというデメリットが生じます。
一方、そら豆を茹でる際にお湯から投入する場合、高温で短時間に加熱することで酵素の働きを瞬時に失活させ、鮮烈なエメラルドグリーンと特有の豊かな香気を閉じ込めることが可能です。したがって、塩茹でとして粒立ちの良さや程よい歯ごたえを楽しみたい場合は「熱湯から短時間」、離乳食やスープ用として極限まで柔らかく煮崩したい場合は「水から弱火」という使い分けが論理的な正解となります。