高野山における宿坊・寺院宿泊事業は、一般的な観光ホテルとは決定的に異なる。宿坊は本来、参拝者が身を清め、祈りを捧げるための僧房だ。提供される料理は精進料理であり、朝は早く、消灯時間も厳格に定められている。
「リゾートホテルのような24時間対応のサービスを期待して来られると、双方にとって不幸な結果になります」。そう語る関係者の言葉には、構造的な限界がにじむ。少人数の僧侶や職員で運営されているため、夜間のトラブル対応や多言語での細かな規約説明には限界があるのだ。
廊下を歩く音一つにも気を配るのが宿坊の伝統的作法である。しかし、「お金を払っているのだから自由に使わせろ」という観光客的な消費者意識を持ち込まれると、現場の少人数体制では対応しきれない。結果として、トラブルのリスクが高い予約ルートや客層を絞らざるを得ない事態に追い込まれている。