メディア界や言論空間において、高市氏とNHKの関係が語られる際に必ず引き合いに出されるのが、2016年2月の衆議院予算委員会における電波法第76条および放送法第4条に関する答弁です。当時、一部メディアによって「政権批判を行う放送局への電波停止をちらつかせた」とセンセーショナルに報じられ、メディア規制の象徴であるかのように批判されました。
国会議事録を一次情報として検証すると、発言の法理的構造は全く異なる様相を示しています。民主党(当時)議員からの「将来的に政治的公平性を著しく欠く放送を繰り返した場合、電波法76条に基づく電波停止命令を出す可能性はあるのか」という法解釈を問う質問に対し、高市総務相(当時)は次のように回答しました。
「行政を預かる大臣として、将来にわたって一切法を適用しないという答弁は法治国家としてできない。ただし、電波停止は極めて慎重であるべきで、過去に適用された例はなく、現実的には考えにくい」
法解釈の枠組みを正当に説明した行政答弁であったものの、これが政治的文脈で切り取られた結果、「高市=放送弾圧派」というイメージが独り歩きすることになりました。高市氏の真意は、放送法が定める「政治的公平」「報道の事実性」「多角的な論点の提示」という公共の電波を預かる事業者の最低限の規律を再確認させ、国民の信頼に足る放送環境を維持することにありました。