『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のクライマックスにおける白眉は、なんといってもリドルが自身の名前の文字を組み替え、「I am Lord Voldemort(私はヴォルデモート卿だ)」の文字列を空間に浮かび上がらせるシークエンスだ。
日記に封じ込められていた50年前の記憶。哀れな被害者を装いながらハリーに近づき、ジニー・ウィーズリーの生命力を吸い取って受肉を果たそうとする狡猾な罠。石田の芝居は、親身な相談相手としての穏やかな声色から、正体を明かした瞬間の凍てつくような低音へと、滑らかに、しかし決定的に変貌を遂げる。
この声のグラデーションが凄まじい。観客は彼が怪物だと分かっていながら、その知性と甘美な響きに思わず耳を奪われてしまう。悪に惹きつけられる人間の心理を、声一本で見事に体現していた。