溶剤で樹脂のガードを崩した後に待ち構えているのが、繊維にしがみつく難敵「微粒子顔料」だ。この顔料を繊維から完全に引き剥がす立役者こそ、日本の洗剤技術を牽引する花王株式会社やライオン株式会社が磨き上げてきた界面活性剤の分子工学である。
一般社団法人日本石鹸洗剤工業会(JSDA)の学術資料によれば、界面活性剤は水になじむ「親水基」と油になじむ「親油基」を併せ持つ。油性ペンの処理において、アルコール等で浮いた色素粒子を親油基が隙間なく包み込み(ミセル化)、親水基が水分子と手を結ぶことで、繊維の隙間から水流へと引きずり出す。
頑固な顔料汚れには、一般的な弱アルカリ性粉末洗剤よりも、原液塗布に適した高濃度液体洗剤が効果を発揮する。前処理として洗剤の原液を直接インク跡に数滴垂らし、指の腹で馴染ませて10分ほど置く。このわずかな放置時間が、界面活性剤を繊維の深部まで浸透させるための決定打となる。