建築計画と住環境心理学の観点から考察すると、ふかし壁の成否は「空間の容積と視線の抜け」にどれだけの余裕があるかで決まります。アメリカの文化人類学者エドワード・T・ホールが提唱したパーソナルスペース(個体間距離)の理論は、建築の壁面認知にも当てはまります。人間は視界の正面にある壁が前進してくると無意識に圧迫感を抱き、逆に陰影による奥行きを感じると空間を広く認識する傾向があります。
つまり、ふかし壁によって物理的に床面積を削っても、間接照明や適切な壁面素材で視覚的な奥行きを補正できれば、心理的な狭さは相殺されます。しかし、物理的な動線幅(最低でも人がすれ違うのに必要な750mm〜800mm)を割り込んでしまう場合は、どれほど美しく仕上げても日々のストレス源へと転落します。
ふかし壁を強くおすすめできる人の条件
- LDKの面積が18畳以上あり、リビングの短手方向(視聴距離)が3.2m以上確保できている人
- テレビ周りの乱雑なコードやAV機器の存在を生活空間から完全に消し去りたいミニマリズム志向の人
- 間接照明やアクセントウォールを駆使し、夜間のリラックスした空気感を重視したい人
- 配管位置を動かせないマンションで、水回りや梁の段差を美しく整えたい人
ふかし壁の導入に慎重になるべき人の条件
- 部屋の横幅が狭く、ふかすことで家具間の通路幅が700mm未満になってしまう間取りの人
- 季節や子どもの成長に応じて、家具の配置やテレビの位置を頻繁に模様替えしたい人
- 建築コストを極力切り詰めたい段階で、必須機能以外の意匠工事に予算を割く余裕がない人
- 将来購入するテレビのサイズや壁掛け金具の仕様が定まっていない人