カワハギの締め方決定版!肝が劇的に美味くなる血抜きと持ち帰り術の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

なぜ同じ海域で釣れたカワハギであっても、口の中でとろけるような芳醇な甘みを持つ個体と、鼻を突くアンモニア臭や鉄臭さを放つ個体に分かれてしまうのか。その真相は、カワハギ特有の内臓構造とヘモグロビンの生化学的変化に隠されています。

カワハギの肝臓は全重量の10〜15%以上を占める巨大な脂肪の塊です。脂質含有率が高いため、周囲の血液や体液の匂いを強力に吸着する性質を持っています。東京湾のベテラン船長は、長年の現場観察から次のように警鐘を鳴らします。「クーラーボックスにそのまま放り込んで窒息死(野締め)させたカワハギは、心臓停止に伴って血液が内臓深部に鬱血する。とくに肝の毛細血管内に残った血液は、釣獲から数時間でヘモグロビンが酸化してメトヘモグロビンへと変質し、独特の生臭さと黒ずみを引き起こす」。

さらに見逃せないのが、魚類が強いストレスを感じた際に筋肉中で急激に消費されるアデノシン三リン酸(ATP)の減少と乳酸の蓄積です。生簀の中で長時間弱らせて腹を上に向けた状態(いわゆる「浮き」の状態)で放置すると、体内環境が酸性に傾き、身の透明感と歯ごたえが失われます。つまり、「暴れさせずに速やかに中枢神経を遮断し、心臓が微弱に動いている間に完全に脱血する」ことこそが、雑味を完全に排除した純白の肝を手に入れるための不可欠な絶対条件なのです。