冨手麻妙のキャリアを語る上で欠かせないのが、その特異なバックボーンです。1994年3月17日生まれ、神奈川県出身の彼女は、2009年にAKB48の第8期研究生オーディションに合格して芸能界の門を叩きました。しかし、巨大アイドルグループの競争の中で自らの居場所を見出すことは容易ではなく、同年中にグループを離脱。グラビアやジュニアアイドル活動を経て、彼女が見出した真の活路は「映画というフィクションの現場」でした。
彼女の才能をいち早く見抜き、その表現欲求を解放させたのが映画監督の園子温です。『新宿スワン』『リアル鬼ごっこ』『みんな!エスパーだよ!』といった話題作に立て続けに出演し、過激かつ混沌とした園ワールドの現場で鍛え上げられました。当時の映画祭インタビューにおいて、彼女は「可愛いだけのアイドルでは自分の心を満たせなかった。剥き出しの感情をぶつけ合える映画の現場こそが自分の生きる場所だと確信した」と述懐しています。
アイドル時代の挫折と葛藤が、後年の「カメラの前で一切の嘘をつかない」という強烈なプロフェッショナリズムの土台となったことは間違いありません。