オーラルヒストリーが持つ最大の強みは、紙の記録には残らない人間関係の機微や現場の空気感を鮮やかに蘇らせる点にあります。しかし、光が強ければ影も濃いように、手法特有の落とし穴も存在します。導入を検討する際は、オーラルヒストリーメリットとデメリットを正しく把握しておく必要があります。
最大のデメリットは、「人間の記憶の不確実性」です。どれほど高名な人物であっても、時間の経過とともに記憶は薄れ、後付けの正当化や他者のエピソードとの混同が無意識のうちに生じます。都合の悪い事実の隠蔽や、自らの功績の誇張といった主観的バイアスを完全に排除することは不可能です。
だからこそ、聞き手側には証言を鵜呑みにせず、同時代の公文書や日記、他者の証言と照らし合わせる「クロスチェック」の徹底が求められます。主観的な語りを客観的な歴史事実へと昇華させる批判的精神こそが、この手法の生命線です。