インターネット上の掲示板やSNSでは、大型特番のたびに「オープニングの合唱は口パクではないのか」「すべて事前収録なのではないか」といった冷ややかな言説が散見されます。しかし、現場の制作実態に照らし合わせると、これは明らかな誤解であることが分かります。
FNS歌謡祭が音楽業界で別格のリスペクトを集めている最大の理由は、「武部聡志音楽監督の指揮のもと、原則として全編生演奏・生歌唱を貫いている」という頑ななポリシーにあります。激しいダンスパフォーマンスを伴うグループの場合、激しい動線による呼吸音をカバーするためにトラック音源(被せ)を併用するケースは技術的に存在しますが、ボーカルマイク自体は完全に生きており、飛天の独特な空間反射によって「生々しすぎる声」がそのままオンエアに載ります。不揃いなビブラートや時に起こるピッチの揺れこそが、完全ライブであることの何よりの証明です。
また、この緊張感溢れるオープニングをコントロールする重要な役割が司会者です。FNS歌謡祭司会者の経緯を辿ると、芳村真理氏や露木茂氏といった昭和の名司会者から、楠田枝里子氏、黒木瞳氏、そしてSMAPの草彅剛氏、森高千里氏、渡部建氏へと受け継がれ、現在は相葉雅紀氏(嵐)とフジテレビ女性アナウンサーがその大役を担っています。
司会者が交代するたびに、番組が持つ「格式とアットホーム感のバランス」が再構築されてきました。特に相葉氏の起用以降、アーティストに対する温かなリスペクトと、過度の緊張を和らげる柔らかな空気感がオープニングトークに加わり、円卓の出演者たちから自然な笑顔を引き出す独自のグルーヴが形成されています。