最終巻『天啓陣中』で描かれたのは、私たちが夢見た「王道ファンタジーのハッピーエンド」とはかけ離れた地獄絵図だった。アルスラーン率いるパルス軍の精鋭たち、いわゆる「十六翼将」が、まるで将棋の歩兵のように次々と討ち死にしていく。かつて無敵を誇ったダリューンや、知略の限りを尽くしたナルサスまでもが、あっけない最期を迎える。この容赦のなさが、読者の心をへし折ったのだ。
戦記物である以上、誰かの死は避けられない。しかし、あまりにも駆け足で、かつ感情の整理が追いつかないスピードでキャラクターが消費されていく様は、カタルシスよりも虚無感を強く残した。読者が求めていたのは、彼らの生きた証としての輝かしい死であり、記号的な処理ではなかったはずだ。