フィリピンの街を歩くと、誰もがその規格外の大きさに圧倒されます。運営母体であるSMプライムホールディングスが展開するモール群は、なぜこれほどまでに巨大化し、国民の熱烈な支持を集めているのでしょうか。その背景には、フィリピン特有の気候環境と家族観、そして都市インフラの課題が深く関係しています。
熱帯気候に属するフィリピンでは、日中の気温が35度近くまで上昇し、激しいスコールに見舞われることも日常茶飯事です。一般家庭におけるエアコンの普及率や電気料金の高さといった生活環境のなかで、強力な冷房が完備されたSMモールは、誰もが快適に過ごせる「都市の避暑地」としての役割を果たしてきました。現地では涼を求めてモールを訪れる行動を「malling(モーリング)」と呼び、日常の動詞として定着しています。
さらに社会学的な観点から見逃せないのが、フィリピンの強い家族主義(カトリック文化に基づく拡大家族の結びつき)です。週末になると、祖父母から小さな子どもまで3世代・10人以上の親族が一堂に会して食事を楽しみ、映画を観て買い出しをする光景が日常的に見られます。こうした大人数の受け皿となるため、ボウリング場、アイススケートリンク、クリニック、さらには日曜礼拝を行うチャペルや政府機関の出張窓口までがひとつの施設内に組み込まれ、結果として世界屈指のメガ構造体へと発展を遂げました。