日常で感じる焦りや恐れの多くは、客観的な事実ではなく、頭の中で勝手に膨らませた「取り越し苦労」に過ぎません。心理学の研究において、人間の脳は太古の過酷な自然環境を生き抜くため、危険を過大に評価する「ネガティビティ・バイアス」を備えていることが分かっています。つまり、私たちの脳は構造上、放っておくと最悪の事態ばかりを想像してしまう癖があるのです。
しかし、日常の脅威が生命の危機に直結しにくくなった現在でも、脳の警戒システムだけが過剰に作動し、人間関係や仕事のプレッシャーを「命の危険」と同レベルのストレスとして処理してしまいます。「心配事の9割は起こらない」という言説が真実である最大の理由は、私たちが恐れているものの正体が現実のトラブルではなく、脳の防衛本能が生み出した実体のない幻影だからです。