奈良公園に生息するシカの正確な頭数を把握するため、保護団体である一般財団法人「奈良の鹿愛護会」は毎年7月、早朝の公園一帯で大規模な一斉頭数調査を実施しています。調査員や多数のボランティアがエリアごとに分担し、目視による全頭カウントを行うこの調査は、半世紀以上にわたって蓄積されてきた極めて貴重な一次データです。
公表された最新の奈良の鹿愛護会調査結果によると、奈良公園一帯に生息するシカの総頭数は1,325頭前後を記録しています。この数値は公園内を自由に歩き回っている個体だけでなく、負傷や病気、農作物被害防止などの理由で保護施設「鹿苑(ろくえん)」に一時的または恒久的に収容されている頭数を含めた全体の数字です。
気になる奈良公園鹿オスメス内訳と子鹿のバランスを見ると、非常に興味深い性比の偏りが確認できます。
- オス(成鹿):約280〜300頭(全体の約22%)
- メス(成鹿):約780〜800頭(全体の約60%)
- 子鹿(当歳馬ならぬ当歳鹿):約230〜250頭(全体の約18%)
調査結果から明らかなように、成鹿のメスの頭数はオスの2.5倍以上に達しています。野生のニホンジカにおいてメスが長寿であり、群れを形成して定住しやすい生態を持つことに加え、オス同士の激しい縄張り争いや発情期の行動圏拡大に伴う交通事故死のリスクがオス側に偏っていることが、この顕著な性比差を生み出す要因です。また、初夏に生まれたばかりの奈良公園鹿子鹿頭数は毎年200頭以上を数え、厳格な保護環境下で安定した再生産が行われている事実を裏付けています。
法的な位置づけとして、彼らは単なる公園の飼育動物ではなく、文化財保護法に基づく国の特別天然記念物奈良の鹿に指定されています。管理区域内に限定された野生動物であり、誰かの所有物ではない「無主物」でありながら、国家レベルの手厚い保護対象となっている点が、世界でも類を見ない共生関係の根幹を成しています。