どれほど精緻な楽譜があっても、それを表現する演奏者の卓越した技量がなければ魔法は成立しない。その重責を担ったのが、ウィリアムズの長年の盟友であるロンドン交響楽団(LSO)だ。
アビイ・ロード・スタジオで行われたセッションでは、驚異的なテンポで駆け上がるフルートとピッコロのアルペジオ、重厚でありながらシルクのような滑らかさを持つ金管セクションの咆哮が次々とテープに刻まれた。とりわけ、ホルン隊が奏でる主旋律の伸びやかさは、イギリス伝統のブラスサウンドならではの風格を宿している。
当時のオーケストラ・サウンドトラック録音の現場は、デジタルシンセサイザーの台頭期でもあった。しかしウィリアムズは、総勢80名を超えるアコースティックオーケストラの生々しい空気の振動に徹底的にこだわった。プレイヤーたちの息遣い、弓が弦を擦る摩擦音、ホールの残響。そのすべてが一体となり、今聴いても全く古びない圧倒的な音場を生み出したのだ。