本作を語るうえで、往年の名優・緒形拳の存在を外すことはできない。貞美の父であり、富良野で在宅ホスピス医として地域医療に尽くす白鳥貞三を演じた緒形拳は、本作の撮影終了直後に急逝。事実上の遺作となった。
当時、自らも重い病を抱えていた緒形拳は、その事実を周囲に悟らせることなく現場に立ち続けたという。死にゆく患者に寄り添い、優しく手を握る貞三の姿は、役柄を超えて緒形自身の人生に対する真摯な眼差しそのものであった。中井貴一演じる息子・貞美との再会シーンで見せた眼差しの深さは、日本のテレビドラマ史に刻まれるべき圧巻の瞬間だ。言葉以上に雄弁な沈黙と呼吸が、画面越しに観客の心を鷲掴みにする。