蜂に遭遇した瞬間、焦燥感から愛犬を抱きしめてパニックに陥る飼い主が少なくありません。しかし、現場での数分間の処置が生死の確率を大きく左右します。体系化された蜂に刺された犬の応急処置を確実に実践してください。
最初のステップは「二次被害の防止と退避」です。蜂は針を刺した際、興奮物質(集合フェロモン)を大気中に放出します。特にスズメバチやアシナガバチは仲間の蜂を呼び寄せるため、刺された場所にとどまることは愛犬だけでなく飼い主にとっても致命的です。愛犬を抱きかかえるかリードを短く持ち、最低でも20〜30メートル以上その場から速やかに離れてください。
安全な場所に避難したら、次は刺傷部位の特定と針の確認です。ここで決定的に重要なのが犬の蜂の針の抜き方における厳格なルールです。
ミツバチに刺された場合、犬の皮膚には黒い点のような針と、脈打つ半透明の毒嚢(どくのう)が残されています。これを指先やピンセットでつまんで引き抜こうとしてはなりません。つまんだ瞬間に毒嚢を押し潰し、内部に残っていた濃厚な毒液を一気に愛犬の体内に圧入してしまうからです。
正しい除去法は、プラスチック製のクレジットカード、キャッシュカード、あるいは硬い厚紙の縁を使い、皮膚と平行に滑らせるようにして毒針を根元から「横へ削ぎ落とす」方法です。引っ掛けて弾き飛ばす感覚で行うと、毒嚢を圧迫せずに安全に除去できます。なお、スズメバチやアシナガバチの針は皮膚に残らないため、無理に針を探して皮膚をほじくり返す必要はありません。
針を取り除いた、あるいは針がないことを確認した後は、犬の蜂刺され患部の冷やし方に移行します。患部に清潔な水道水を数分間かけ流して表面の毒液を洗い流します。その後、保冷剤や氷を必ず清潔なタオルに包み、患部に優しく当てて冷却してください。保冷剤を直接皮膚に当てると凍傷を招く恐れがあります。冷やす目的は痛みの緩和だけでなく、局所の血管を収縮させて血流を緩やかにし、毒素が全身へ拡散するスピードを遅らせる点にあります。