「飛んでいる矢は止まっている」なぜ?ゼノンの詭弁と論破の真相

「飛んでいる矢は止まっている」なぜ?ゼノンの詭弁と論破の真相

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「飛んでいる矢は止まっている」という言葉の本来の意味を正しく理解するには、提唱者であるエレアのゼノンが構築した精緻な論理ステップをたどる必要があります。ゼノンの主張は、以下の4つの前提と帰結から成り立っています。

第1に、「あらゆる時間は無数の『現在(瞬間)』の集まりである」と仮定します。映画のフィルムが1コマごとの静止画の連続であるように、時間も分割可能な最小単位の連続であると考えます。
第2に、「あるひとつの瞬間において、矢はみずからの体積とまったく等しい空間を占めている」と指摘します。
第3に、時間の幅が存在しない「その瞬間」において、矢は動くことができません。動くためには一定の時間経過が必要だからです。つまり、どの瞬間を切り取っても、矢はその場に静止していることになります。
そして第4に、あらゆる瞬間において静止しているものをすべて足し合わせても、やはり静止しているはずであり、「飛んでいる矢は常に静止している」という結論に至ります。

このロジックの恐ろしい点は、前提を認めてしまうと推論自体に形式的な破綻が見当たらない点にあります。そもそもゼノンがこうしたパラドックスを考案した哲学的理由は、師であるパルメニデスの教えを擁護するためでした。パルメニデスは「真に存在するものは唯一不変であり、変化や運動、多様性は人間の感覚が生み出した幻影にすぎない」と説いていました。ゼノンは「運動が存在する」と仮定して論理を突き詰めていくと、かえって自己矛盾に陥ることを証明し、師の教えの正しさを逆説的に示そうとしたのです。

小林 直樹
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小林 直樹

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