掲示板サイトや動画配信プラットフォームで頻繁に取り沙汰される「妖怪通り」という呼び名は、公的な名称でも地域住民が使う言葉でもありません。現地において該当するエリアは、国の登録有形文化財に指定されている料亭建築「鯛よし百番」へと続く「百番通り」を中心とする外縁部の通りです。では、なぜこのような不穏な俗称が定着してしまったのでしょうか。
起源を辿ると、1990年代後半から2000年代初頭のインターネット黎明期に、大型匿名掲示板の夜の街情報スレッドで使われ始めたスラングが発端とされています。飛田新地には20代前後の若い女性が中心となる「青春通り」や「メイン通り」が存在し、それらと年齢層の差別化を図る過程で、ネット特有の誇張・冷やかし表現として「ばばあ通り」「妖怪通り」という蔑称が付けられたのが真相です。
取材関係者や長年街を見つめてきた地域史研究者の言説によれば、現場に立つ女性たちは決してグロテスクな存在などではなく、昭和から平成の街の移り変わりを知る40代から60代前後の円熟した女性たちです。ネット上の悪意あるミームが「おどろおどろしい魔境」のような虚像を作り上げ、それが現在に至るまでデジタルタトゥーのように検索エンジンに残り続けているに過ぎません。