飛田新地を訪れる者が最初に直面する絶対の禁忌が「スマートフォンの操作および一切の撮影禁止」です。街の至る所に「撮影禁止」「NO PHOTO」の看板が日本語・英語・中国語・韓国語で掲示されています。
ネット上では「違法行為の証拠隠滅のため」「暴力団の報復があるから」といった都市伝説が流布していますが、実務上の最大の理由は就労女性の肖像権とプライバシー保護です。飛田で働く女性の多くは、昼間は一般企業に勤める会社員や学生、子育て中の母親であり、親族や知人に知られずに働いています。スマートフォンが高性能化し、SNSで瞬時に全世界へ拡散される現代において、盗撮動画が一本流出すれば個人の人生を破壊しかねません。
万が一カメラを向けた場合、呼び込みの女性や巡回中の私服警備スタッフから即座に大声で警告を受け、端末の保存フォルダおよびゴミ箱の完全消去をその場で確認されます。悪質な場合は即座に組合事務所へ同行を求められるため、物見遊山でのカメラ起動は厳に慎むべき行為です。
また、「なぜ警察は飛田を摘発して潰さないのか」という疑問に対しても、法執行の実態に誤解が存在します。警察当局と飛田新地の歴史は決して無風だったわけではありません。過去には飛田新地料理組合の元理事長や幹部が逮捕された摘発劇が複数回発生しています。
代表的な事例が、店舗物件の賃貸借契約を巡る組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)や売春防止法違反幇助容疑での立件です。暴力団関係者が実質的に所有する建物を巡る利益供与や、過激な無許可営業に対しては、大阪府警による強制捜査が幾度となく行われてきました。すなわち警察は「売春の建前そのもの」を全面解体するのではなく、「暴力団の資金源化」「人身売買的拘束」「街域の外への無秩序な拡大」という境界線を越えた際に容赦のないメスを入れるというスタンスを一貫して維持しています。