クリーンで匂いのつかない焼肉店が街を埋め尽くす中、この店のアプローチは真逆を行く。店内に足を踏み入れた瞬間、衣服や髪に匂いがつくことを防ぐ手立てはほぼ存在しない。用意されたビニール袋に上着を詰め込み、戦闘態勢を整える客たちの顔には、むしろ清々しい覚悟が漂う。
煙そのものが調味料なのだと常連客は笑う。脂の落ちた炭から立ち上る燻煙が肉を包み、独自のフレーバーを纏わせる。服に染み付いた匂いすら、帰宅後の余韻として楽しむ。無菌化された都市生活に飽き足らない人々にとって、この生々しい体験こそが最高の贅沢となっている。