物語の始まりは、茨城県北部の架空の村・奥茨城村だ。のどかな田園風景の中で育ったみね子は、高校を卒業したら村で手伝いをしながら暮らすつもりでいた。しかし、出稼ぎに出ていた父・実が東京で突然失踪したことで、彼女の人生は大きく舵を切ることになる。
父を探し、仕送りをするために上京を決意したみね子を待っていたのは、トランジスタラジオ工場「向島電機」での集団就職だった。同世代の仲間たちと身を寄せ合い、ライン作業に追われる日々。決して楽な生活ではない。それでも、同じ舎監の女性や同僚たちと分け合うつたない夕食や、ささやかなおしゃべりの中に、切ないほどの温もりが宿っていた。