反復試行の確率公式「P = nCr pr (1-p)n-r」を目にしたとき、誰もが抱く最大の疑問が「なぜC(コンビネーション)を掛けるのか」という点です。結論から述べると、Cを掛ける理由は「目的の事象が起きる『回の組み合わせ(場所の選び方)』が何通りあるか」を数え上げているからに他なりません。
この理屈を感覚的に掴むために、もっともシンプルな「歪みのないコインを3回投げて、表がちょうど2回出る確率」を考えてみます。1回の試行で表が出る確率は 1/2、裏が出る確率は 1 - 1/2 = 1/2 です。
仮に「1回目:表、2回目:表、3回目:裏」という特定の順番で出る確率を計算すると、掛け算により「(1/2) × (1/2) × (1/2) = (1/2)2 × (1/2)1 = 1/8」となります。しかし、問題が求めているのは「表がちょうど2回出る確率」であり、順番は指定されていません。実際に表が2回出る出方をすべて書き出すと、以下の3通りが存在します。
- 【パターン1】:(表、表、裏) ⇒ 確率は (1/2) × (1/2) × (1/2) = 1/8
- 【パターン2】:(表、裏、表) ⇒ 確率は (1/2) × (1/2) × (1/2) = 1/8
- 【パターン3】:(裏、表、表) ⇒ 確率は (1/2) × (1/2) × (1/2) = 1/8
これら3つのパターンは互いに排反(同時に起こらない)であるため、それぞれの確率を足し合わせる必要があります。すなわち「1/8 + 1/8 + 1/8 = 3/8」です。この計算は、「1回あたりの確率 (1/2)2(1/2)1」に「パターンの総数である 3」を掛け算していることと同じです。
では、この「3通り」を数式でどう表すか。全3回の投擲枠「【第1回】【第2回】【第3回】」という3つの空席の中から、「表が入る2つの席をどこにするか」を選ぶ問題に置き換えることができます。3つの異なる枠から2つを選ぶ組み合わせですから、まさに「3C2 = 3通り」となります。これが反復試行における「nCrの理由」です。
同様に、「全n回のうち、確率pで起きる事象Aがr回起きる」場合、特定の並び順(例えば最初にr回連続でAが起き、残りn-r回が起きない)の確率は pr (1-p)n-r です。そして、Aがどの回に発生するかという場所の選び方が nCr 通り 存在するため、これらを掛け合わせた「nCr pr (1-p)n-r」が公式として成立します。