高橋ユキの代表作として広く知られるのが、晶文社から刊行された『つけびの村』だ。山口県周南市で起きた連続殺人・放火事件を追った同作は、地方の限界集落という閉鎖環境に渦巻く噂、人間関係の軋轢、そして孤立の構図を浮き彫りにした。
現地に何度も足を運び、住民たちの何気ない世間話に耳を傾け、地域の歴史を掘り起こす。彼女が提示したのは、単なる「狂気の殺人者」という安易な記号化ではなかった。誰もが陥りかねない共同体の歪みと、その果てに生まれた惨劇の構造である。事件ノンフィクションの歴史に確固たる足跡を残したこの取材姿勢は、彼女の代名詞となった。