全作品を追おうとする際、ネット上で頻繁に交わされるのが「エヴァンゲリオンで飛ばしていい話はあるのか?」という疑問です。長大なシリーズであるため、効率よく鑑賞したいと考えるのは自然な心理ですが、ここには知っておくべき明確な事実とネットの誤解が存在します。
まず、映画作品の中で完全にスキップして問題ないのが1997年3月公開の『新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 シト新生(DEATH & REBIRTH)』です。この作品の前半部「DEATH」はTVシリーズ全26話の総集編であり、後半部「REBIRTH」は次作『Air/まごころを、君に』の第25話(前半パート)そのものです。当時は制作の遅れから未完成のまま公開されたという歴史的背景があり、のちに完全版として『Air/まごころを、君に』が劇場公開されたため、現代の視聴者が『シト新生』をわざわざ単体で追う必要性は極めて低いといえます。
一方で、TVシリーズ(全26話)の中に「飛ばしていい捨て回」があるかといえば、答えは明確に「1話たりとも飛ばすべきではない」となります。
例えば、第4話「雨、逃げ出した後」や第9話「瞬間、心、重ねて」などのエピソードは、一見するとシンジの日常やコミカルな使徒迎撃訓練を描いた箸休めのように映るかもしれません。しかし、これら前半の明るい日常描写や仲間との共闘が緻密に積み上げられているからこそ、物語中盤以降の精神的孤立や惨劇の落差が強烈な心理的インパクトとして機能します。日常の解体プロセスそのものが作品の骨格であるため、TVシリーズを鑑賞する場合は1話から24話まで愚直に視聴することが推奨されます。
【プロの判断】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
鑑賞ルートを選択するにあたり、自身の鑑賞スタンスに応じて以下の条件に当てはまるかチェックしてください。
【「新劇場版4部作」から入るのが向いている人】
・現代のアニメーションが持つ高精細な作画、3DCGによる迫力ある戦闘アクションを求めている人
・仕事や学業で忙しく、まずは10時間以内のタイパ重視でエヴァの全体像を理解したい人
・鬱屈とした描写や陰鬱なバッドエンドよりも、前向きで希望の残る爽快な結末を楽しみたい人
【「TV版+旧劇」から入るべき人(慎重に時間をかけるべき人)】
・90年代当時の社会現象、サブカルチャーの歴史的転換点を空気感ごと追体験したい人
・庵野秀明という作家が抱えていた生々しい葛藤、人間の暗部を抉り出すような心理描写に惹かれる人
・『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の真の感動を、四半世紀の重みとともに受け止めたい考察派の人